医学部の地域枠選抜とは?実施大学とメリット及びデメリットを解説

医学部地域枠選抜のメリット・デメリットを紹介

地域枠選抜を実施する大学だけでなく、利用するメリット及びデメリットを紹介しています。

医学部受験は、倍率が高く非常に厳しい道のりです。

医学部合格を目指す多くの受験生は、医学部受験と聞くと一般受験を思い浮かべるかと思います。

しかし医学部入試は一般入試の他にも、学士編入であったり医学部地域枠選抜といった特殊な形態の入試方法が存在するのです。

これらは現役の受験生のみならず医学部再受験生にも知っておくと

そこで、本記事では医学部地域枠選抜に焦点を当てて、その内容について紹介していきます。

目次

医学部受験地域枠選抜とは

医学部受験地域枠選抜とは
まずは、そもそも医学部受験地域枠選抜とは何かということについて、簡単に解説します。

Wikipediaには、医学部地域枠選抜が以下のように説明されています。

医学部地域枠推薦(いがくぶちいきわくすいせん)とは、僻地の医者不足を解消するため各地方の国公私立大学医学部医学科が設置している推薦入試枠のことである。受験条件は各国公私立大学によって異なるが、受験者をその大学が立地する県の高校の出身者に限定したり、卒業後の勤務地をその県に限定していることが多い。

つまり、特定の地域や特定の診療科の医師不足を解消するために各大学が将来の制限を設けている受験枠ということです。

これだけ聞くと、地域枠で入るメリットがないように感じてしまうかもしれませんが、地域枠の多くは学費を免除したり返済不要の奨学金援助を支給したりとさまざまな取り組みを行なって学生を集めようとしています。

後述しますが、文部科学省による調査で全国80ある医学部のうちなんと71もの大学が医学部地域枠選抜を実施しています。

そんな地域枠についてメリット・デメリットを紹介し、その後具体的な大学の医学部地域枠選抜の導入状況について順に見ていきます。

医学部地域枠選抜のメリット

医学部地域枠選抜のメリット
まず、医学部地域枠選抜のメリットについてですが、以下の三つが挙げられます。

  1. 学費が安い
  2. 入学しやすい
  3. 将来に悩む必要がない

それぞれについて、解説していきます。

学費が安い

冒頭でも説明した通り、医学部地域枠選抜では学費が免除されたり返済不要の奨学金があります。

従って、経済的な理由で医学部の進学に不安があるといった受験生でも、この医学部地域枠選抜制度を用いることで、医学部に入学して医師になることができます。

医学部の学費は高額で、国立大学医学部でも一般的に6年間でかかる学費が約350万円と言われています。

また公立大学医学部では、それぞれの大学や居住地によって変動はありますが、概ね国立大学と同程度の金額になります。

さらに、私立大学では基本的に6年間にかかる学費は安くても2,000万円程度となっており、国公立大学の5倍以上となっています。

これらの学費が障害となって医学部への進学を諦めようとしていた受験生にとって、この地域枠選抜という制度は非常に有用なものとなるでしょう。

この経済的側面から、医学部地域枠選抜の利用を考える受験生が大多数でしょう。

入学しやすい

二つ目のメリットとしては、一般受験よりも医学部地域枠選抜のボーダーの偏差値が下がる大学があり、その点で合格できる可能性が上がるということがあります。

河合塾によると、2021年度の山形大学の前期入試において、

  • 一般入試偏差値 :57.5
  • 地域枠選抜偏差値:55.0

となっており、地域枠選抜の方が偏差値が低いことがわかります。

もちろん、大学によっては一般入試と地域枠選抜の偏差値が変わらないこともありますが、この山形大学のように地域枠の方が入学しやすいという例もありますから、学力的に医学部に合格できるかどうか不安だという方は、医学部地域枠選抜を利用してみるのも一つの手です。

将来に悩む必要がない

将来の診療科が規定されるということは選択肢が狭まるということですが、別の見方をすれば将来が決まっているのでその点で悩む必要はなくなるということです。

将来のことについて悩む時間を勉強に注ぐことができるという点は大きなメリットです。

医学部地域枠のデメリット

医学部地域枠のデメリット
では次に、医学部地域枠選抜のデメリットについて見ていきましょう。

デメリットとしては、以下の二つが挙げられます。

  1. 将来の自由度が下がる
  2. 心理的負担がある

将来の自由度が下がる

地域枠のデメリットとして最も大きなものはやはり将来の自由度が下がるということでしょう。

前述の通り医学部地域枠選抜では、将来働く地域や診療科が縛られてしまうことによって、将来の選択肢が狭められてしまいます。

医学部受験の段階では、その特定の地域や診療科で働くことに抵抗がなかったとしても、六年間の医学部生活で将来像が変わってくるということは良くあります。

そうなってしまった場合に、医学部地域枠選抜を利用したことを後悔するということを耳にします。

こういったことで、現在問題となっているのが地域枠離脱問題です。

地域枠離脱問題とは、地域枠選抜で医学部に入学したにも関わらず、規定の地域や診療科で働くことを放棄してしまうということです。

奨学金や学費免除を受けていながら、入学の条件を守らないことは本来決してあってはいけないことです。

しかし、地域枠を離脱してしまう人が一定数いることは事実なのです。

医師の地域的偏在や診療科ごとの絶対数不足を補うための地域枠ですから、このような現状を打開するために地域枠離脱に対する罰則が今後より強化されることも考えられます。

心理的負担

地域枠で入学した学生は、前述の通り特定の診療科で働くことが要求されます。

そして、その地域枠から正規のルートで離脱するには奨学金を一括返済することが一般的です。

従って、「もしも医学部在学中に希望している診療科が変わったらどうしよう」といった不安を常に抱えたまま医学部生活を送ることになります。

ただでさえ難易度の高い試験が多く、医師国家試験にも合格する必要があり精神的にすり減ることが多い医学部でそのような不安を抱えたまま六年間を過ごすことは非常に苦しいです。

この心理的な負担を鑑みた上で、地域枠選抜の利用を検討しましょう。

実際の実施状況

実際の実施状況
それでは、実際の各大学の地域枠選抜の実施状況について見ていきましょう。

以下に、国公立、私立の順で令和4年度の入学定員と地域枠の募集人数を一覧形式でまとめていきます。

全国80の医学部設置大学のうち、71の大学が地域枠を実施しています。

大学区分 大学名 R4年度
地域枠等
募集人数
R4年度
入学定員
国立 北海道大学 0 112
国立 旭川医科大学 47 105
国立 弘前大学 82 132
国立 東北大学 9 116
国立 秋田大学 29 129
国立 山形大学 8 113
国立 筑波大学 36 139
国立 群馬大学 18 123
国立 千葉大学 20 117
国立 東京大学 0 110
国立 東京医科歯科大学 4 105
国立 新潟大学 33 133
国立 富山大学 35 110
国立 金沢大学 12 117
国立 福井大学 20 115
国立 山梨大学 35 125
国立 信州大学 25 120
国立 岐阜大学 28 110
国立 浜松医科大学 15 120
国立 名古屋大学 5 111
国立 三重大学 35 125
国立 滋賀医科大学 26 110
国立 京都大学 0 107
国立 大阪大学 0 110
国立 神戸大学 10 117
国立 鳥取大学 36 109
国立 島根大学 26 112
国立 岡山大学 9 117
国立 広島大学 18 118
国立 山口大学 43 117
国立 徳島大学 17 114
国立 香川大学 27 114
国立 愛媛大学 30 115
国立 高知大学 25 115
国立 九州大学 0 110
国立 佐賀大学 23 103
国立 長崎大学 39 125
国立 熊本大学 8 110
国立 大分大学 13 110
国立 宮崎大学 40 100
国立 鹿児島大学 18 120
国立 琉球大学 17 117
公立 札幌医科大学 90 110
公立 福島県立医科大学 80 130
公立 横浜市立大学 30 90
公立 名古屋市立大学 37 97
公立 京都府立医科大学 7 107
公立 大阪公立大学 15 95
公立 奈良県立医科大学 38 114
公立 和歌山県立医科大学 36 100
私立 岩手医科大学 34 130
私立 東北医科薬科大学 55 100
私立 獨協医科大学 20 120
私立 埼玉医科大学 24 130
私立 国際医療福祉大学 0 140
私立 杏林大学 12 117
私立 慶應義塾大学 0 110
私立 順天堂大学 31 138
私立 昭和大学 19 128
私立 帝京大学 11 116
私立 東京医科大学 12 121
私立 東邦大学 5 105
私立 日本大学 0 110
私立 日本医科大学 10 120
私立 北里大学 5 125
私立 金沢医科大学 18 123
私立 愛知医科大学 13 120
私立 藤田医科大学 5 115
私立 東京慈恵会医科大学 18 118
私立 東京女子医科大学 35 111
私立 聖マリアンナ医科大学 10 115
私立 東海大学 10 120
私立 大阪医科薬科大学 2 112
私立 関西医科大学 25 127
私立 近畿大学 17 112
私立 兵庫医科大学 10 112
私立 川崎医科大学 46 126
私立 久留米大学 25 115
私立 産業医科大学 0 105
私立 福岡大学 10 110

参考:令和4年度 大学医学部における地域枠等の導入状況 文部科学省医学教育課
https://www.mext.go.jp/content/20221223-mxt_igaku-100001063_1.pdf

※2023年度入試の最新情報については、各大学のホームページを参照してください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

地域枠のメリット・デメリットや、実際の各大学の医学部地域枠選抜の実態についてまとめてきました。

医学部受験の志望校を選ぶ際には、一般入試だけでなく、今回紹介した地域枠選抜についても一つ検討してみることをお勧めします。

前述の通りデメリットもありますが、現時点で診療科が決定している人や経済的に医学部進学が厳しいといった場合には非常に有用な制度となっています。

また医学部受験の際には、自分の学力に合っているのかや学びたいことを学ぶことができるのかどうか、そして併願大学や後期日程でどの大学を受験するのか、初期研修やマッチングの状況など考慮することがたくさんありますので、ぜひさまざまな大学を徹底的に比較して、公開のないような選択をしてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次