国立・私立の医学部の学費を比較

国立・私立の医学部の学費を比較

国立・私立の医学部の学費を比較

私大医学部では学校により学費の差が激しく安い大学ほど難易度が高い傾向にあります。

目次

国公立と私立の医学部学費事情を解説

医学部と言えば学費が高いことで世間で注目されがちですが、国公立なら他学部と同じ水準で私立も最近は値下げする大学が増えてきています。

特に私立大学医学部は学費が大学間で大きく異なるため、志望大学選びにも影響してきます。

そこで今回は学費をランキングで紹介しながら、学費の高い私立大学医学部に進学する方法も紹介していきます。

卒業までに学費はいくらくらいかかる?

卒業までに学費はいくらくらいかかる?

国立大学医学部の学費

以前は国立大学の学費は全国一律でした。2003年に法人化されてからは国が定めた「標準額」の120%内であれば学費を大学の裁量で決めてよいとされています。

現在、ほとんどの大学が標準額を設定していますが、千葉大学と東京医科大学は値上げを実施しています。

大学名 入学金 授業料 6年間総額
標準額 282,000円 535,000円 3,492,000円
千葉大学 282,000円 642,960円 4,139,760円
東京医科歯科大学 282,000円 642,960円 4,139,760円

公立大学医学部の学費一覧

地方自治体が運営する公立大学の授業料は国立に準じています。

入学金については住所地が県内(市内)の入学者には安く、それ以外の入学者には高めに設定されているところがほとんど。

それは、地元の医療を支える人材養成に力を入れているからです。

大学名 入学金 授業料(1年)
札幌医科大学 市内 282,000 市外 282,000 535,800
福島県立医科大学 県内 282,000 県外 846,000 535,800
横浜市立大学 市内 141,000 市外 282,000 573,000
名古屋市立大学 市内 232,000 市外 332,000 535,800
京都府立大学 府内 282,000 府内 493,000 535,000
大阪公立大学 府民 282,000 府外 382,000 535,800
奈良県立医科大学 県内 282,000 県外 802,000 535,000
和歌山県立医科大学 県内 282,000 県外 752,000 535,800

私立大学医学部の学費

学校法人が運営する私立大学は付属病院も経営しています。

病院の経営は設備費や検査装置、薬剤費、人件費など多額の経費がかかるので、その不足分を補うために医学部の学費が高く設定されているといわれます。

東京女子医科大学では2021年度から学費を1200万円値上げし、6年間の総額が4500万円以上になり、全国で2番目に学費の高い大学となりました。

学費値上げに踏み切ったのは、新型コロナによる付属病院の収益減少が要因の1つといわれていますから、今後の感染状況によっては学費を値上げする大学がさらに出てくるかもしれません。

私大医学部学費ランキング(2023年度)

順位 大学名 6年間学費 初年度学費 入学金
1 国際医療福祉大学 18,500,000 4,500,000 1,500,000
2 順天堂大学 20,800,000 2,900,000 2,000,000
3 関西医科大学 21,000,000 2,900,000 1,000,000
4 日本医科大学 22,000,000 4,500,000 1,000,000
5 慶應義塾大学 22,059,600 3,843,350 2,000,000
6 東京慈恵会医科大学 22,500,000 3,500,000 1,000,000
7 自治医科大学 23,000,000 5,000,000 1,000,000
8 東邦大学 25,800,000 4,800,000 1,500,000
9 昭和大学 27,000,000 4,500,000 1,500,000
10 大阪医科薬科大学 28,410,000 5,985,000 1,000,000
11 東京医科大学 29,400,000 4,800,000 1,000,000
12 藤田医科大学 29,800,000 6,300,000 1,500,000
13 産業医科大学 30,490,000 5,915,000 1,000,000
14 日本大学 33,100,000 6,350,000 1,000,000
15 東北医科薬科大学 34,000,000 6,500,000 1,000,000
15 岩手医科大学 34,000,000 9,000,000 2,000,000
17 愛知医科大学 34,200,000 8,200,000 1,500,000
18 聖マリアンナ医科大学 34,400,000 6,900,000 1,500,000
19 東海大学 35,000,000 6,400,000 1,000,000
20 近畿大学 35,827,000 6,804,500 1,000,000
21 久留米大学 36,200,000 9,200,000 1,000,000
22 獨協医科大学 36,600,000 8,600,000 1,500,000
23 杏林大学 37,000,000 9,500,000 1,500,000
23 兵庫医科大学 37,000,000 8,500,000 2,000,000
25 埼玉医科大学 37,000,000 8,250,000 2,000,000
26 福岡大学 37,738,260 8,626,710 1,000,000
27 帝京大学 37,728000 9,362,000 1,050,000
28 北里大学 38,900,000 9,000,000 1,500,000
29 金沢医科大学 39,500,000 11,000,000 2,000,000
30 東京女子医科大学 45,340,000 11,300,000 2,000,000
31 川崎医科大学 45,500,000 10,500,000 2,000,000

2023年度から学費を変更した医学部

2023年度から学費を変更したのは関西医科大学大阪医科薬科大学の2校でした。

この2校は関西の医学部で上位の2つであり、もともと人気があったことが共通の特徴に上げられます。

おそらく関西医科大学と大阪医科薬科大学は大学病院の経営が軌道に乗ったことで、今度は質のいい学生を集めようというフェーズに入ったのでしょう。

2008年に順天堂大学が学費の大幅値下げに踏み切ったことで人気が上昇し、偏差値が上がったことを彷彿とさせるように、一般的に私立医学部が学費を下げると優秀な学生からの人気が上がり、偏差値も上がります。

来年度からの関西医科大学・大阪医科薬科大学を受験する医学部志望の学生は注意が必要になると考えられます。

特に関西医科大学は全国でも3番目に学費の安い私立医学部に躍り出たので、これまで距離的に遠いからと敬遠していた関東圏の優秀な医学部受験生が、学費が安くなったからという理由で受験しに来る可能性は高いです。

学費は予想以上にかかる

学費は予想以上にかかる

ここまで、私立国公立ともにランキングなども交えて医学部の学費を解説してきました。

しかし、これまでに話したのはあくまで「授業料」としての学費。

例えば、諸会費や教育後援年会費、海外臨床実習の積み立て、同窓会費や学生会費、保護者会費など、授業料以外にも必要になるお金はまだまだあります。

また、昭和大学や順天堂大学、川崎医科大学など1年次全寮制の大学の場合は加えて寮費がかかるので注意が必要です

医学部生は「修学費」が高い

医学部で学生生活を送る中で学費以外のかかる費用として最も大きいのが「修学費」。

例えば教科書を例に挙げると、一般的な大学生の教科書は1000円高くても3000円程度ですが、医学生が使う教科書は医学の専門書なだけあって平均8000円、中には2万円を超えるものもあるほど

しかもそれが各診療科ごとに必要になるわけです。眼科・整形外科・小児科・皮膚科・呼吸器内科・循環器内科…。

総じて20以上もある診療科の教科書を毎度購入するとなるとかなりの金額になるのは想像に容易いものです。

また、4年次のCBTや卒業前の国家試験に向けては、ほぼ全ての医学生が予備校の映像授業を購入します

この値段がそれぞれで、ざっと10万円ほど

6年間の「生活費」を忘れがち

医学部が6年制であることは周知の事実ですが、その分、生活費がかかるということも忘れてはならない事実。

単純に考えても一般の大学生よりも3/2倍の生活費がかかります。

その上、実習に際して5万円の聴診器、1万円の白衣や靴、外病院での実習の際には交通費や宿泊費など、気づかないところで費用がかかります。

また、都会であればその分家賃など物価が高くなり、逆に地方の大学であれば生活に車が必須となってその維持費が・・・と、実際のところこの生活費にかかるのは都会・地方ともに同じぐらいだと見込まれます。

結局のところ、実際に医学生として生活するには最低でも、授業料+6年総額600万円近くの生活費・学費がかかると思っておいた方がよいでしょう。

私立医学部は学費が安いほど難易度が高い

私立医学部は学費が安いほど難易度が高い

サラリーマン家庭でも目指せる私立医学部

私立大学医学部の学費の平均は3000万円で、最も安い国際医療福祉大学(千葉県成田市)は6年総額1850万円。

それでも他学部と比較すると高額ですが、この金額なら年収600万円クラスの一般家庭からも進学が可能とされています。

その上の2000万~2500万円の学費であれば、奨学金制度や特待生制度、教育ローンなどを上手に組み合わせることで進学は十分可能です。

ただし、2000万円台の医学部を見るとわかるように、順天堂大学、日本医科大学、慶応義塾大学、東京慈恵会医科大学と偏差値上位の難関大学ばかり。

慶應・日医・慈恵は昔から私立御三家と呼ばれ、偏差値の高い医学部として知られています。

順天堂はもともと中堅レベルの医学部。それが2008年に900万円近い値下げをしたことで優秀な入学者の獲得に成功し、今では御三家に加わり「医学部四天王」と呼ばれるほど、難関医学部の仲間入りを果たしています。

国公立大学医学部と併願する受験生が多い

学費が安い私立大学医学部は、国公立の医学部を目指す受験生が滑り止めで併願するパターンが多く見られます。

国公立医学部を目指す受験生は、共通テストで高得点を取るための勉強をしていますから学力上位層が押し寄せることになり、難易度は必然的に高くなります。

つまり、私立大学医学部の上位を目指す受験生は、東大をはじめとする旧帝国大学医学部も狙えるトップクラスのライバルと合格を争うことになります

高額な私立大学医学部は穴場になりがち

高額な私立大学医学部は穴場になりがち

学費を値上げした医学部はねらいめ

反対に学費の高い医学部となると、親が医師や経営者といった裕福な家庭に限定されがちです。

学費の安い医学部とは違い、限られた受験生間での競争になるため、難易度は下がる傾向があります

実際、昭和大学が2020年度から学費を500万円値上げすると発表したことで、倍率が下がった経緯があります。

また、東京女子医科大学は、2018年に明るみになった東京医科大学の女性差別問題をきっかけに志願者が増えて難易度も上がりました。

しかし、学費を大幅に値上げした影響で2021年度の志願者は減り、難易度は元に戻ったといわれています。

経済的に問題がなければ、こうした学費の高い医学部を穴場として受験するのも1つの方法です。

費用を抑えて私立大学医学部に行く方法

費用を抑えて私立大学医学部に行く方法

防衛医科大学校で給料をもらいながら医師を目指す

学費負担のない医学部といえば防衛医科大学校です。

防衛医科大学校は所管が文部科学省や厚生労働省ではなく防衛省。

入学後は自衛隊員(特別職国家公務員)となり、学生手当(約11万円/月)期末手当が支給されます。

ただし、卒業後に自衛隊員として9年間勤務しなかった場合は、学費など卒業までにかかった費用(最大約5000万円)を返還する義務を負うことになります。

自治医科大学・産業医科大学では学費が減免される

自治医科大学(栃木県)と産業医科大学(福岡県)は私立ですが、どちらも入学後に修学資金が貸与されます。しかし、要件は次のような違いがあります。

  • 自治医科大学:卒業後に出身地へ戻り、知事の指定する公的医療機関で医師として一定期間(通常9年)働くと返済が免除される。
  • 産業医科大学:卒業後に企業などの産業医として一定期間(9~11年) 働くと、学費総額の3分の2に相当する修学資金の返済が免除される。

したがって、自治医科大学の学費は実質無料、産業医科大学の学費は実質1130万円程度の負担で済むことになります。

特待生制度で私立大学医学部の入学試験に合格する

私立大学医学部では特待生制度を設けており、一般選抜の成績優秀者は学費の一部免除を受けることができます。

特待生制度を導入している私立の医学部は多いのですが、中でも入学者に優しいのが国際医療福祉大学

学費が1850万円と一番安いのに、特待生になると入学金が免除され、6年間で最大1400万円も給付されるので学費総額は300万円となり、国立大学医学部より安くなります。

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地域枠はおすすめ?メリットと注意点

地域枠はおすすめ?メリットと注意点

国公立・私立共に多くの大学の医学部では医師の小数区域を解消することを目的に、原則決められた地域で一定期間はたらくことを出願条件としている地域枠が設けられています。

地域枠は一般枠に比べ、倍率が低く入りやすいところが多いのが特徴です。

地方自治体が設けているもの、大学が独自で行っているもの、出身地の指定があるもの、奨学金貸与の有無、卒後の条件など地域枠にはそれぞれ細かい違いがあります。

ここからは地域枠の特徴についてご紹介いたします。

学費がほとんどかからない自治体も多い

各自治体の設ける地域枠は

  • 大学問わず医学部に進学すれば月20万~30万の奨学金を受けられるもの
  • 特定の大学のみ6年間の学費がほぼ免除になるもの

など様々な様式が存在します。

例えば東京都地域枠の場合は順天堂大学・杏林大学・日本医科大学という指定はありますが6年間の修学費に加え、6年間の生活費720万円も支給されるので経済的な負担がかなり軽減されるといえます。

医学部卒業後の進路が入学時点で制約される

地域枠で入学を許可された場合、気を付けなければならないことがあります。

多くの場合「大学卒業後、直ちに知事の定める医療機関で9年間勤務(臨床研修期間を含む)すること。(うち半分の期間は「医師不足地域の医療機関」での勤務)」が条件となるのです。

これは、入学前から本人の適正関係なく、専攻する科や勤務先病院が決められてしまうことを意味します。

通常の場合、医学生や研修医の時代に経験をつみ将来勤務したい病院や医局を熟考し決定しますが、地域枠入学の場合はこれができません

例えば、先に述べた東京地域枠の場合は小児医療・周産期医療・救急医療・僻地医療のどれか従事することが条件になります。

僻地勤務の場合は最新の設備や知識に触れられず、専門医の取得などのキャリアアップを目指す際に支障が生じる懸念はあるので注意が必要です。

入学の段階で、漠然と「医師になりたい」という場合はお勧めできませんが、自分の描く将来のビジョンと地域枠の条件が一致している場合は、地域枠入学も視野に入れることをおすすめします。

留年や国家試験不合格で返済義務が生じることも

多くの地域枠の場合、奨学金給付は6年間までなので留年した場合の修学費や生活費は自己負担になります。

また、国家試験が不合格となり地域枠から離脱せざるを得ない場合、給付された奨学金に加え年利率10%の利子を一括で返済しなければいけない場合がほとんどです。

まとめ

今回は、志望校選びの参考になるように国立・公立・私立大学医学部の学費を一覧で紹介しました。

私立大学医学部の特徴は、学費が安いほど難易度が高くなる点です。

経済的に余裕があり、浪人は避けないという場合は学費の高い医学部をねらうのもおすすめです。

大事なのは、どの医学部に入るかより、その先の医師国家試験に合格することだからです。

駿台や河合塾といった大手予備校に所属している受験生は特に、チューターなどから受験校を絞って提案をされることが多いですが、かかる生活費や学費のことも念頭に選べるよう自分で調べておくと良いでしょう。

なお、学費や各種の制度は変更されることがありますから、最新情報で確認するようにしてください。

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