私立大学の入試難易度をランキングで分析
医学部入試といえば、非常に難易度が高いことで有名です。
そんな全国医学部82大学の中、私立医学部は全31大学。
私立専願の受験生も、国公立併願の受験生も、私立医学部やその難易度については、意外と知らない事実がたくさんあるものです。
ここでは私立医学部を中心に受験情報を2022年の偏差値ランキングと併せて詳しく解説していきます。
私立医学部の特徴「難易度を左右するものとは?」
突然ですが、医学部入試の平均倍率がどのくらいかご存知ですか?
国公立医学部ではここ数年、平均倍率は減少傾向にあり、約4倍ほど。5年〜10年前でも5〜6倍程度でした。
一方の私立医学部はというと、平均15倍で推移。2014年度入試では19.5倍だったこともあります。非常に難易度が高いように思えます。
同じ医学部でも私立医学部と国公立医学部とでは大きな違いがあることが分かります。
これは、私立医学部受験は、専願だけでなく国公立や他の私立医学部との併願で受験する人が多いからです。
倍率が高ければ難易度は高く、倍率が低ければ難易度もある程度低くなる傾向にあります。
ここでは、そんな私立医学部入試の特徴について、解説していきます。
一般選抜「過去問の傾向と対策がイノチ!」
私立医学部の選抜方式の7割は一般選抜。そして課されるのは、英語・数学・理科2科目であることがほとんど。これらの例外についてはこの後ご紹介します。
最も多い一般選抜では、各大学独自の問題が出題されます。
これは国公立医学部でも同じですが、医学部受験は傾向と対策がイノチ。
基礎知識とある程度の応用力を身につけたら、なるべく早い段階で過去問に取り組んでその難易度をチェックしましょう。
もしも受験校を決めていないのであれば、好都合です。
いくつか候補校を決めたら、各大学の過去問を確認して受験校を検討することをおすすめします。
あなたの得意な科目、分野が多く出ていれば難易度が低く、苦手な内容が多いほど難易度が高いことは言うまでもありません。
選抜方式「チャンスは1回…?近年の傾向とは!」
ご存知の通り、私立医学部の入試制度のほとんどは一般選抜。私立医学部の全選抜の中の約7割を占めています。
ではその他にはどんな選抜方式があるのでしょうか?
「共通テスト利用方式」が約1割を占め、「学校推薦型選抜(公募制と指定校制)」も1割、そのほかに「総合型選抜(面接などを通して総合的に人物評価する方式)」があります。
近年の私立医学部の傾向として、国公立医学部のような後期入試(2期入試)や共通テスト利用選抜、学校推薦型選抜の実施数が拡大しています。
これまでは一般選抜で勝負するしかなかった私立医学部入試が、このように選抜方式が多様化したことで合格の可能性が高まりました。
その意味では、私立医学部合格の難易度が下がってきているとも言えます。
共通テスト利用選抜「複数合格も狙えるが倍率が高い⁉」
2022年度入試では、私立医学部31大学中17大学で共通テスト利用入試が実施されました。(産業医科大学は共通テスト必須)
応用力が問われる一般選抜においても難易度の高い私立医学部ですから、基礎レベル中心の共通テストを利用した選抜方式となると、難易度は非常に高いものになります。
しかし、共通テスト利用入試はその募集定員が少なく、同じ大学の一般選抜よりも高倍率と、難易度がとても高いことに要注意です。40倍なんて高難易度な倍率も珍しくありません。
実際のところ、国公立併願でない医学部受験生がわざわざ共通テスト利用入試を選択するのは、その難易度の高さから、見当違いとも言えます。
一方で、国公立併願の受験生にとっては、共通テスト利用入試で私立対策の時間を削れるため、より効率的な受験ができます。
試験科目「英数理2」じゃない大学がある?
私立医学部のほとんどは、国公立2次と同様に、英語・数学(ⅠA・ⅡB・Ⅲ)・理科2科目に加え、小論文・面接が課されます。
しかし、一部の私立医学部では例外が見られます。
その代表的な大学を挙げてみましょう。
入試科目が例外的な大学
- 東海大(理科1科目)
- 帝京大(英語 + 数(Ⅲなし)/化/物/生/国から2科目)
- 近畿大(数学にⅢが含まれない)
- 昭和大:必須科目は英語と理科2科目。数学と国語から1科目選択で計4科目。
理科1科目に集中したい人には東海大、国語が得意な人には近畿大、数Ⅲがどうしても苦手な人には帝京大・近畿大・昭和大がおすすめです。
医学部受験生の多くは理系ですが、文系の方が得意な受験生も少なくないため、そんな受験生たちにとっては優しい選抜方法で、他大学よりも難易度が低いかもしれません。
しかし、このように受験科目を絞ったが最後、国公立はもちろん他の私立医学部も全て受験対象から外れてしまいます。
かなり大きな賭けとも言えるので、あなたにとって本当に難易度が変わる選択なのか、慎重に検討してください。
共通テスト利用で国・社がない大学
私立医学部の共通テスト利用選抜では、国公立医学部と同様に国語社会が入試科目となっている大学がほとんどです。
しかし、その国語や社会が必要ない大学があります。
- 獨協医科大
- 杏林大
- 東海大
- 近畿大(前期C方式)
これらの大学は英数理のみで受験が可能です。
また、英数理と国語のみで受験可能な大学もあります。
- 埼玉医科大(前期)
- 関西医科大
- 福岡大
共通テスト利用選抜で国語や社会の対策をしなくてよいとなれば難易度は変わってきます。もちろん、その分、英数理で高得点を上げなければなりません。
英数理が得意で社会国語が苦手だという人にとっては、英数理を集中して勉強することで、合格率がアップするでしょう。
小論文を課さない大学
- 東邦大(小論文なし)
- 藤田医科大(小論文なし)
この2校のみ、小論文を入試科目に加えていません。
どうしても小論文が苦手であったり、小論文対策が間に合わないという受験生は、この2校を受けてみるのもいいでしょう。
ちなみに、国公立・私立を含めて、面接を課さない大学はありません。
受験日が重ならないか、「早めに調べておくように!」
私立医学部を複数受験する予定の人が必ず注意するべきこと。それは「受験日」です。
私立医学部の一般選抜は、共通テスト終了後の1月中旬から2月中旬まで実施されます。
期間が短いだけに受験日が他大学と重なることは避けられません。
2022年度の一般選抜での一例を挙げると、国際医療福祉大学と岩手医科大学が1月19日、日本医科大学と東海大学、福岡大学が2月2日で重なっています。
ほかにも重複している大学は多数あります。
大学側も対策を講じており、受験日を複数日設けて受験日を選択できるようになっている大学もあります。
しかし、日程をずらすことができても、連日あるいは1日おきの受験となると心身ともに負担が大きくなることも考慮しなければなりません。
これは難易度には直接関係ありませんが、受験日は早い段階で確認するようにしましょう。
私立医学部の難易度ランキング
私立大学医学部の系譜を知っておこう
私立大学医学部の志望校選びにあたり、まずは医学部を設置している私立大学の系譜を把握しておきましょう。
私立御三家(3大学)
戦前から大学として認可され、古い歴史のある大学。入試難易度も高い。
東大、旧帝大レベルの難易度です。
旧医専(10大学)
御三家に続く形で戦前から戦後にかけて大学へ昇格した、医学専門学校を前身とするグループ。昔からあるため伝統のある大学です。東大ほどではありませんが、国公立難関校レベルの難易度です。
新設医大(16大学)
国公立大学の医学科新設の波に合わせて、1970年代に作られた私立医学部。個人病院や専門学校が母体となるケースも。このグループでは難易度はバラバラ。
自治医科大は地域医療を支える医師の養成を目的として全国の都道府県が共同で栃木県に設立した私立大学で、難易度は国公立レベル。産業医科大は企業などの産業医の育成を目的とした大学です。
近年新設(2大学)
東日本大震災後の東北地方の復旧・復興に貢献し、東北地方の医療を支える総合診療医の養成を目指して、2016年に東北医科薬科大学が設立。
独自のカリキュラムの中で、放射線医学に精通した医師を養います。
卒業生の多くが東北地方に残り、東北の医療を支える人材となります。
国家戦略特区制度を利用し、成田国際空港を核とした医療産業集積構想という計画のもと、国際性を重視した国際医療福祉大学が2017年に設立。
定員140人のうち20人が留学生枠、1年生後期から2年生にかけてほとんどの授業が英語、6年次には4週間以上の海外臨床実習の義務など、国際性の強い大学です。
どちらも難易度が高い大学となっています。
医学部入試の難易度とは?
これまでに見てきたように、医学部入試では様々な選抜方式が採用されています。
医学部入試での難易度とは、いくつもの要素を全て加味し、受験生自身の得意・不得意や長所短所も考慮した上で測るものです。
しかし、実際に難易度として公開する際には偏差値を基準とするほか術がありません。
ここでいよいよ各大学医学部の偏差値ランキングを紹介しますが、これはあくまで偏差値の順位です。
受験科目や倍率、試験科目の傾向などを踏まえて複数の大学を比較し、「自身にとっての」難易度ランキングを検討してください。
選抜方式と偏差値ボーダーランキング
ランキングの見方
※ボーダー得点率は、共通テスト利用方式を取り入れている大学においての得点率。たとえば得点率89%とは、自分の正答率が89%以上であればその大学に合格する可能性が50%あることを意味します。
大学名 | 方式 | 偏差値 |
---|---|---|
慶應義塾大学 | 一般 | 72.5 |
国際医療福祉大学 | センター | 70.0 |
順天堂大学 | A方式 | 70.0 |
順天堂大学 | B方式 | 70.0 |
順天堂大学 | センター併用 | 70.0 |
順天堂大学 | センター東京都地域枠 | 70.0 |
順天堂大学 | センター新潟県地域枠 | 70.0 |
順天堂大学 | センター千葉県地域枠 | 70.0 |
順天堂大学 | センター埼玉県地域枠 | 70.0 |
順天堂大学 | センター静岡県地域枠 | 70.0 |
東京慈恵会医科大学 | 一般 | 70.0 |
東京慈恵会医科大学 | 東京都地域枠 | 70.0 |
日本医科大学 | 前期 | 70.0 |
日本医科大学 | 地域枠前期 | 70.0 |
産業医科大学 | センター | 70.0 |
東北医科薬科大学 | A方式東北地域 | 67.5 |
東北医科薬科大学 | B方式東北地域 | 67.5 |
自治医科大学 | 一般 | 67.5 |
昭和大学 | 一般 | 67.5 |
東京医科大学 | 一般 | 67.5 |
東邦大学 | 一般 | 67.5 |
東邦大学 | 千葉県地域枠 | 67.5 |
日本大学 | A方式 | 67.5 |
日本大学 | N方式1期 | 67.5 |
藤田医科大学 | 愛知県地域枠 | 67.5 |
大阪医科大学 | 一般 | 67.5 |
大阪医科大学 | 大阪府地域枠 | 67.5 |
関西医科大学 | 一般 | 67.5 |
関西医科大学 | 新潟県地域枠 | 67.5 |
関西医科大学 | 静岡県地域枠 | 67.5 |
関西医科大学 | 大阪府地域枠 | 67.5 |
関西医科大学 | センター併用 | 67.5 |
岩手医科大学 | 一般 | 65.0 |
岩手医科大学 | 地域枠C | 65.0 |
東北医科薬科大学 | 一般 | 65.0 |
国際医療福祉大学 | 一般 | 65.0 |
北里大学 | 一般 | 65.0 |
北里大学 | 相模原市枠 | 65.0 |
杏林大学 | 一般 | 65.0 |
杏林大学 | 東京都地域枠 | 65.0 |
帝京大学 | 一般 | 65.0 |
帝京大学 | 特別地域枠 | 65.0 |
帝京大学 | センター | 65.0 |
東海大学 | 一般 | 65.0 |
東京女子医科大学 | 一般 | 65.0 |
聖マリアンナ医科大学 | 一般 | 65.0 |
金沢医科大学 | 前期 | 65.0 |
愛知医科大学 | 一般 | 65.0 |
藤田医科大学 | 一般 | 65.0 |
近畿大学 | 前期A日程 | 65.0 |
近畿大学 | 地域枠 | 65.0 |
兵庫医科大学 | B | 65.0 |
久留米大学 | 前期 | 65.0 |
福岡大学 | 系統別 | 65.0 |
獨協医科大学 | 一般 | 62.5 |
獨協医科大学 | 栃木県地域枠 | 62.5 |
埼玉医科大学 | 一般 | 62.5 |
兵庫医科大学 | A | 62.5 |
川崎医科大学 | 一般 | 60.0 |
川崎医科大学 | 静岡県地域枠 | 60.0 |
川崎医科大学 | 岡山県地域枠 | 60.0 |
川崎医科大学 | 長崎県地域枠 | 60.0 |
獨協医科大学 | センター | – |
獨協医科大学 | センター栃木県地域枠 | – |
埼玉医科大学 | センター前期 | – |
杏林大学 | センター | – |
順天堂大学 | センター前期 | – |
順天堂大学 | センター後期 | – |
昭和大学 | センター北海道・東北・北関東 | – |
昭和大学 | センター南関東 | – |
昭和大学 | センター東京 | – |
昭和大学 | センター中部 | – |
昭和大学 | センター北陸・近畿・中国 | – |
昭和大学 | センター四国・九州・沖縄 | – |
東海大学 | センター | – |
東海大学 | センター神奈川県地域枠 | – |
東海大学 | センター静岡県地域枠 | – |
東京医科大学 | センター | – |
愛知医科大学 | センター前期 | – |
藤田医科大学 | センター | – |
大阪医科大学 | センター | – |
関西医科大学 | センター | – |
近畿大学 | センター前期C | – |
近畿大学 | センター中期C | – |
福岡大学 | センターⅠ期 | – |
参考までに、国公立医学部で難易度がトップクラスの東大と京大の偏差値が72.5。
次いで難易度の高い旧帝大を見てみると東京医科歯科大と大阪大が70.0。東北大、名古屋大、九州大が67.5となっています。
難易度と学費
私立医学部といえば、国公立より圧倒的に学費が高いことも有名です。
偏差値ランキング上位を占める慶応義塾や順天堂、慈恵会医科などは私立の中でも比較的学費が安く、6年間で約2000万円ほど。
一方、ランキング下位の比較的難易度の低い大学では、6年間で約4500万円と2倍以上。もちろんこれは大学に支払う金額だけですので、部活や下宿費用・生活費まで考慮すると、莫大な金額になります。
この状況を端的に表せば、「難易度の高い私立医学部は学費が安い、難易度の低い医学部は学費が高い」ということになります。
端的に、難易度の高い私立医学部は学費が安く、難易度の低いと学費が高いと言えます。
上記の金額は大学に納める学費(授業料や設備費など)だけなので、これに高額な医学書代や下宿費、生活費なども含めるとかなりの金額になります。
難易度が低いから入りやすいとは言え、費用面で入学ができない受験生も少なくありません。
経済的に厳しいようであれば、難易度は上がりますが国公立医学部合格を目指しましょう。
進学後の卒業難易度を比較【進級率と国試合格率】
これは医学部受験の難易度とは直接関係ありませんが、進学後の留年率や国試合格率なども、受験校選びの参考にすることをおすすめします。
留年の実態は内部事情のためインターネットでわかる範囲は限られていますが、意外にも国家試験合格率のデータから推測することが可能です。
注目すべきは「出願者数」と「受験者数」。
医師国家試験の出願期間は例年11月1日~30日までで、試験は翌2月中旬に3日間、3月に合格発表という流れです。
一方の医学部は6年生の9月~12月にかけて卒業試験があり、この卒業試験に合格しなければ当然卒業できず、国家試験の受験資格を得ることができなせん。
合格率のデータを見ると、私立医学部の中には国試の出願者数と受験者数の差が開いている大学があります。最も多いところでは約20名。
つまり、20名近くが6年生で留年しているというわけです。
留年生が出るのは私立に限ったことではなく、国公立医学部でも見られることです。しかし、私立医学部のほうが留年率が高い印象があります。
これは医学部受験の難易度には影響しませんが、入学後のことも意識して調べてみるといいでしょう
ストレート卒業率と国試合格率ランキング(私立大学医学部)
ここでは、私立大学医学部における6年ストレート卒業率の高い順に、国試合格率も併せて紹介します。
※2015年入学。第115回国家試験(2021年3月)合格者状況
順位 | 大学名 | 入学者数 (名) |
6年での卒業率 (%) |
国試合格率 (%) |
---|---|---|---|---|
1 | 順天堂大学 | 127 | 96.9 | 96.1 |
2 | 東京慈恵医科大学 | 112 | 94.6 | 97.5 |
3 | 慶応義塾大学 | 114 | 92.1 | 98.2 |
4 | 東京女子医科大学 | 110 | 91.8 | 92.5 |
5 | 大阪医科薬科大学 | 111 | 91.0 | 85.6 |
6 | 昭和大学 | 117 | 88.0 | 97.6 |
7 | 自治医科大学 | 123 | 87.0 | 100.0 |
8 | 日本大学 | 122 | 86.1 | 87.9 |
9 | 金沢医科大学 | 110 | 85.5 | 86.7 |
10 | 日本医科大学 | 114 | 84.2 | 95.9 |
11 | 藤田医科大学 | 115 | 82.6 | 98.1 |
12 | 東京医科大学 | 120 | 82.5 | 98.3 |
13 | 関西医科大学 | 117 | 82.1 | 92.7 |
14 | 久留米大学 | 116 | 81.9 | 84.8 |
15 | 獨協医科大学 | 120 | 81.7 | 97.2 |
15 | 聖マリアンナ医科大学 | 115 | 81.7 | 96.5 |
17 | 岩手医科大学 | 136 | 81.6 | 93.0 |
18 | 東邦大学 | 115 | 80.9 | 94.9 |
19 | 北里大学 | 120 | 80.8 | 98.2 |
19 | 東海大学 | 104 | 80.8 | 89.9 |
21 | 埼玉医科大学 | 128 | 80.5 | 96.0 |
22 | 愛知医科大学 | 113 | 77.0 | 98.2 |
23 | 杏林大学 | 117 | 74.4 | 96.7 |
24 | 兵庫医科大学 | 112 | 74.1 | 93.1 |
25 | 福岡大学 | 110 | 72.7 | 91.3 |
26 | 近畿大学 | 122 | 72.1 | 87.8 |
27 | 帝京大学 | 121 | 69.4 | 93.8 |
28 | 産業医科大学 | 105 | 68.6 | 96.6 |
29 | 川崎医科大学 | 120 | 64.2 | 85.6 |
ー | 東北医科薬科大学 | ー | ー | ー |
ー | 国際医療福祉大学 | ー | ー | ー |
大学の偏差値と進級率に相関はあるか
ランキング順位より偏差値が高い医学部は進級率も高いということができます。
ランキング上位3校は国家試験合格率も非常に高く、入学時の偏差値も高いことから、入学時から意識の高い学生が在学中の6年間継続して勉強し続けていることがわかります。
しかし、愛知医科大学などは私立医学部では中堅であるのに対しランキング下位であること、金沢医科大学は比較的入学しやすいのにランキング上位に入っていることなどの例外もあることも心得ておきましょう。
なお、国際医療福祉大学、東北医科薬科大学は新設校の為卒業生のデータがありません。
ランキング下位の帝京大学は群を抜いて進級が厳しい大学で、ストレートで卒業して医師国家試験に合格する人の割合は50%ほどといわれています。
文部科学省や厚生労働省からの指導で、6年次の留年者数が多すぎることなどが指摘されたため、今後は卒留者数が減少すると予想されますが、5年生次に総合試験が課せられたため、そこで留年者をだすことも予想されます。
大学の偏差値と医師国家試験合格率に相関はあるか
国試合格率はどの大学も高く、それほどの差がありません。
上の表にはありませんが、偏差値の高い東大は2021年の国試合格率は80校中52位と中位にランクされています。
このことからも、入試偏差値と国試合格率はあまり関係がないといえそうです。
どの大学も合格率が高いのは、大学側が対外的に国試合格率の高さをアピールするために、合格が難しそうな学生は卒業試験で落として、あえて国試を受けさせないようにしているのが理由とも言われています。
もちろんそうした大学ばかりではなく、国家試験合格のために外部から選任講師を招いて講習を行い、どんな学生でも努力すれば合格できるような支援体制を整えている大学があることもつけ加えておきます。
ストレート進級率や国試合格率で大学を選ぶべきか
これらの確率が高い大学は、
- 留年を回避させるシステムが充実している
- 国試合格対策の講座・情報提供が充実している
- 学生間に「国試必勝!」という空気感がある
があるといえます。
よって、大学選びの一つの基準として利用してもよいでしょう。
しかし、結局は大学に入ってから自分がどのように目標に向かうかが一番大きく影響するので、ランキングに一喜一憂せずあくまでも参考程度にされることをおすすめします。
女子受験生や多浪性に寛容な大学ランキング
2018年に東京医科大学で、女子受験生と多浪生が不利になる得点操作が行われていたことが明るみになり、社会問題になりました。
これを受けて厚生労働省が調査をし、そういった差別を行っていた大学に対して是正勧告したため、2022年度現在は差別がとられることはないかもしれません。
しかし、医学部入試には面接・小論文といった点数化されない不明瞭な要素があるため、合否判定自体ブラックボックスとなっていることも否定できません。
そのようなことから女子受験生と多浪生に寛容な大学を把握しておくことも受験対策の1つです。
男女比ランキング(2021年度)
次のランキングは、上から順に合格者(入学者)の女子比率が高い私立大学医学部となっています。
聖マリアンナ医科大学や日本医科大学では女子が男子よりも多いことから、女子の医学部受験生は狙い目といえるでしょう。
2018年の医学部入試不正事件以来、女子や多浪生の差別に対して厚生労働省が目を光らせているため、どの大学も公平性のある数値にはなっていますが、今後も情報を注意してチェックしていく必要があるでしょう。
順位 | 大学名 | 男子(%) | 女子(%) |
---|---|---|---|
1 | 東京女子医科大学 | 0 | 100 |
2 | 聖マリアンナ医科大学 | 40.6 | 59.4 |
3 | 日本医科大学 | 48.0 | 52.0 |
4 | 埼玉医科大学 | 50.9 | 49.1 |
5 | 金沢医科大学 | 52.8 | 47.2 |
6 | 川崎医科大学 | 53.2 | 46.8 |
7 | 自治医科大学 | 53.9 | 46.1 |
8 | 兵庫医科大学 | 54.4 | 45.6 |
9 | 順天堂大学 | 55.0 | 45.0 |
10 | 東邦大学 | 56.0 | 44.0 |
11 | 杏林大学 | 56.3 | 43.7 |
12 | 北里大学 | 56.4 | 43.6 |
12 | 国際医療福祉大学 | 56.4 | 43.6 |
14 | 昭和大学 | 57.2 | 42.8 |
15 | 近畿大学 | 57.3 | 42.7 |
16 | 愛知医科大学 | 57.5 | 42.5 |
16 | 関西医科大学 | 57.5 | 42.5 |
18 | 東海大学 | 58.1 | 41.9 |
19 | 東京医科大学 | 58.3 | 41.7 |
20 | 東京慈恵会医科大学 | 59.7 | 40.3 |
21 | 日本大学 | 59.5 | 40.5 |
22 | 獨協医科大学 | 60.0 | 40.0 |
23 | 藤田医科大学 | 60.4 | 39.6 |
24 | 産業医科大学 | 62.0 | 38.0 |
24 | 福岡大学 | 62.0 | 38.0 |
26 | 久留米大学 | 62.1 | 37.9 |
27 | 岩手医科大学 | 62.3 | 37.7 |
28 | 帝京大学 | 63.9 | 36.1 |
29 | 大阪医科薬科大学 | 65.7 | 34.3 |
30 | 東北医科薬科大学 | 66.2 | 33.8 |
31 | 慶応義塾大学 | 68.0 | 32.0 |
20歳以上の入学者が多い大学ランキング(国公立医学部)
現浪比(合格者のうちで現役生と浪人生が占める比率)は、比較の対象が「合格者全員」「正規合格者のみ」「入学者のみ」のどれかによって変わってきます。
また、慶応大学のように内部学生が多いところや推薦枠の多い大学は現役生の割合が高くなります。
そのため、現浪比ランキングは難易度を知るための主たる判断基準にはなりません。
ここでは、参考までに国公立医学部合格者の年齢分布から、20歳以上(およそ3浪以上)の入学者が多い上位10大学を挙げてみます。
下表を見ると、島根大や香川大などが多浪生に寛容な大学であることがわかります。
しかし、東大や京大など偏差値上位の医学部は、現役生と1、2浪生が大半を占めることを意味しています。
これは私立医学部にも共通することで、慶應義塾や東京慈恵会など偏差値上位の大学は、現役生と1浪生で90%以上を占めると言われています。
1浪はあまり影響はないようですが、浪人年数(年齢)が高くなるようなら受験する大学を増やすことも考えたほうがよいでしょう。
順位 | 大学名 | 男子(%) | 女子(%) |
---|---|---|---|
1 | 東京女子医科大学 | 0 | 100 |
2 | 聖マリアンナ医科大学 | 40.6 | 59.4 |
3 | 日本医科大学 | 48.0 | 52.0 |
4 | 埼玉医科大学 | 50.9 | 49.1 |
5 | 金沢医科大学 | 52.8 | 47.2 |
6 | 川崎医科大学 | 53.2 | 46.8 |
7 | 自治医科大学 | 53.9 | 46.1 |
8 | 兵庫医科大学 | 54.4 | 45.6 |
9 | 順天堂大学 | 55.0 | 45.0 |
10 | 東邦大学 | 56.0 | 44.0 |
11 | 杏林大学 | 56.3 | 43.7 |
12 | 北里大学 | 56.4 | 43.6 |
12 | 国際医療福祉大学 | 56.4 | 43.6 |
14 | 昭和大学 | 57.2 | 42.8 |
15 | 近畿大学 | 57.3 | 42.7 |
16 | 愛知医科大学 | 57.5 | 42.5 |
16 | 関西医科大学 | 57.5 | 42.5 |
18 | 東海大学 | 58.1 | 41.9 |
19 | 東京医科大学 | 58.3 | 41.7 |
20 | 東京慈恵会医科大学 | 59.7 | 40.3 |
21 | 日本大学 | 59.5 | 40.5 |
22 | 獨協医科大学 | 60.0 | 40.0 |
23 | 藤田医科大学 | 60.4 | 39.6 |
24 | 産業医科大学 | 62.0 | 38.0 |
24 | 福岡大学 | 62.0 | 38.0 |
26 | 久留米大学 | 62.1 | 37.9 |
27 | 岩手医科大学 | 62.3 | 37.7 |
28 | 帝京大学 | 63.9 | 36.1 |
29 | 大阪医科薬科大学 | 65.7 | 34.3 |
30 | 東北医科薬科大学 | 66.2 | 33.8 |
31 | 慶応義塾大学 | 68.0 | 32.0 |
私立合格の必勝ポイント
大学を徹底分析すべし!自分にとって「受かりやすい」大学は必ずある!?
ここまで様々な観点で、私立医学部受験の難易度について触れてきました。
ランキングとしては偏差値を用いて示すことしかできませんが、例え同じ医学部でも、ある受験生にとっては高難易度で、他の受験生にとっては非常に難易度の低い大学であるといったこともあり得ます。
つまり、あなたにとって「受かりやすい」大学、難易度の低い大学が、必ずあるのです。
自分の得意な科目は何か、特にどの分野が得意か不得意か、自己分析を徹底した上で受験校を検討してください。
受験スケジュール
医学部入試攻略の秘訣は、傾向と対策。受験日までの限られた時間で十分に実力をつけられる、現実的な学習計画を立てましょう。
私立医学部と国公立医学部の併願を考えている受験生で、共通テストを利用しない私立医学部との併願の場合は特に要注意。前述したように私立医学部入試は共通テストの直後に始まります。
上手に計画を立てられなかった併願生が、共通テスト対策に追われて私立医学部の対策に時間をかけられず、模試で良い判定を取っていた私立医学部を落としてしまうという残念なケースは珍しくありません。
難易度には関係ありませんが、予備校に通っていない宅浪生や社会人からの再受験生なども、受験スケジュールを守るように自己管理を徹底する必要があります。
まとめ「受験は情報戦!」
ここまで、私立医学部入試の難易度をランキングも合わせて解説してきました。
私立医学部と国公立医学部入試の大きな違いは、「受験科目」です。
国公立では共通テストが課され、必要な科目数が多く難易度が高いのが特徴。
一方私立では、英数理が基本です。
出題範囲が限られている分、十分な傾向と対策を練ることで合格可能性・難易度は大きく変わります。
ぜひこの記事を活用することで、多くの受験生が合格できることを願っています。