この記事を見つけた方は、少なからず医学部受験に興味を持ち、医学部を合格して医者を目指したいという方がほとんどでしょう。
ひとくちに医学部といっても、医学部設置大学は全国に多数あります。
どのような点を重要視して志望大学を決定するのかということは受験生それぞれによって大きく異なります。
本記事では、そんな医学部設置大学選びの一つの大きな要素である医学部の序列マップ・ヒエラルキーに焦点を当てて解説していきます。
具体的には序列・ヒエラルキーが実際にどのような点に影響を与えてくるのか、そして実際の医学部のヒエラルキーはどのようになっているのかということについて順を追ってみていきます。
自分で各医学部を様々な観点から比較して、志望校を決定していくということは非常に労力と時間がかかることですから、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
医学部の格付け・ヒエラルキーとは
そもそも、医学部のヒエラルキーとは一体どのようなものなのでしょうか。
受験業界でヒエラルキーという言葉を耳にすると、東大・京大を頂点に受験の難易度の順に大学を格付けしたものというイメージを持つことが多いですが、これから紹介していく医学部設置大学の序列・ヒエラルキーと難易度や偏差値には大きな関連はありません。
本記事で紹介していく医学部の序列・ヒエラルキーは、主に医学部の設立された順序が関与していると考えるとわかりやすいです。
もちろん、医学部が設立されてからの時間経過とその医学部の受験難易度に正の相関はありますが、偏差値が主軸となっているわけではないということは頭に入れておいてください。
序列・ヒエラルキーはどう影響するのか
最初に医学部設置大学の序列・ヒエラルキーがどのような点に影響してくるのかということについて見ていきましょう。
就職について
まずはみなさんが最も気にするであろう就職についてです。
晴れて医学部受験に合格して最初に経験する就職は、初期臨床研修病院とのマッチングです。
このマッチングの際に、医学部の序列・ヒエラルキーが関与してくるかどうかですが、初期研修マッチングの際に医学部序列はあまり関係がないと言って良いでしょう。
その根拠として以下の、医学部の序列最高位に位置する東京大学、京都大学の初期研修医の出身大学割合について見てみましょう。
施設名 | 定員 | 自大学出身者割合 | 他大学出身者数割合 |
---|---|---|---|
東京大学医学部附属病院 (2022年度) |
105人 | 15% | 85% |
京都大学医学部附属病院 (2021年度) |
76人 | 32% | 68% |
参考:東京大学医学部附属病院 総合研修センター2023年度募集要綱(https://www.h.u-tokyo.ac.jp/soken/physician/guidebook/)
京都大学医学部附属病院 総合臨床教育・研修センター(https://icec.kuhp.kyoto-u.ac.jp/medical/senior/)
これらの割合を大きいと見るか小さいと見るかということは各人に依存するかと思います。
しかし、東京大学医学部附属病院では自大学出身者が15%、京都大学医学部附属病院では自大学出身者が32%
と、いずれも自大学出身者が過半数ではない、すなわち他大学出身者が過半数であるということを考えると出身大学はマッチングにあまり影響しない、ひいては医学部の序列はマッチングにあまり影響しないと考えて良いでしょう。
また、東京大学医学部附属病院では2022年度の採用大学数が51とあり、このことからも関東のみならず全国から広く初期研修医を募集していることがわかります。
医局について
そもそも「医局」とはなんなのかということについてですが、医局という言葉に明確な定義は存在していません。
一般的には、特定の大学病院及びその関連組織をまとめて医局と呼ぶ場合が多いです。医局の大きさというのはその大学ごとに変わってくるため、関連病院の数や医局の構成員の数は大学によってまちまちです。
また、特定の診療科ごとにどこの大学医局がその分野で優位性を持っているのかということも様々となっています。
就職についてと同様に、出身医学部の序列によって医局への入りやすさが大きく変わってくることはないでしょう。
例えば、旧設私立医科大学の一つである東京医科大学総合診療科では、医局員の出身大学が、
- 浜松医科大学
- 筑波大学
- 東京女子医科大学
- 独協医科大学
- 聖マリアンナ医科大学
- 久留米大学
- 東京医科歯科大学
- 東海大学
- 埼玉医科大学
- 宮崎大学
- 琉球大学
- センメルワイス国立大学(ハンガリー)
- 東京医科大学
となっており、非常に多岐にわたっております。
参考:東京医科大学 総合診療科 https://team.tokyo-med.ac.jp/sogo/recruit/from.html
この東京医科大学の例を見ると、出身医学部のヒエラルキーが医局への入りやすさに大きく関わっていることはないと考えて良いでしょう。
ただし、入局試験を含む多くの就職試験で採用されている面接は、基準が明確ではなく、完全なブラックボックスとなっていますので、何が何でも入りたいという医局がある場合はその大学に入学することが無難です。
給料について
給料に関してですが、結論から言うとそこまで大きな差は生まれないと考えて良いでしょう。
医師の給料は、どの診療科を選ぶのかと言うことであったり、常勤医として働くのか開業するのか、はたまたフリーランスとして働くのかといった働き方だったりということに大きく依存するので、医学部のヒエラルキーが給料に大きく関係してくることは少ないです。
給料について重点を置いている場合は、どの大学に入学するのかということよりも将来の需要を想定して、どの診療科に進むのかを決定するのに労力を割くことがより効率的なのではないでしょうか。
経歴について
経歴についてでですが、これは唯一出身大学医学部のヒエラルキーが大きく影響してくる点でしょう。
前提として、序列の高い医学部は、歴史のある医学部である場合が多いです。歴史があるということは、それだけその大学を知っている人の数も多くなります。
患者さんの立場として考えると、やはり誰もが知っている有名大学を卒業している医師の方が無名の大学出身の医師よりも信頼できるでしょう。
有名大学を卒業していることと、その医師の実力が十分であることは必ずしも同義ではありませんが、人は自分がよく知っているものにより安心感を覚えますから、この点で出身大学の序列・ヒエラルキーが重要となってきます。
箔をつけるという意味では、出身校の影響は当然避けることができません。
とはいえ、これは開業した場合を前提とした話で、医療機関で勤務医として勤める場合には大きな問題とはならないでしょう。
国公立大学医学部の序列・ヒエラルキー
では実際に医学部設置大学の序列。ヒエラルキーについてみていきましょう。
医学部設置大学の序列・ヒエラルキーは、国公立か私立かどうかという点で最初に分類され、その中から更にいくつかのグループに分けることができます。
もちろん、序列についての考え方は諸説ありますので、今回紹介するのは一例に過ぎないという点には注意してください。
まずは国公立の序列・ヒエラルキーからみていきましょう。
国公立大学の序列は以下の7段階に分けることができます。
- 旧帝大A
- 旧帝大B
- 旧六/七医大
- 旧医専A
- 旧設(旧設公立医科大学)
- 旧医専B
- 新設医大
各段階に、具体的にはどのような大学が含まれているのかということについて一覧形式で紹介していきます。
旧帝大A(旧帝国大学医学部・高偏差値)
東京大学(東大)、京都大学(京大)、大阪大学(名大)
旧帝大とは、戦前に設立された日本で最も古い旧帝国大学の俗称であり、医学部のみならず法学部や工学部など、多数の学部において日本の大学の序列・ヒエラルキーのトップに君臨し続けている大学群です。
みなさんご存知の通り、これらの大学は受験においてもトップクラスの難易度を誇る大学群です。
旧帝大Aはその旧帝国大学の中でも特に偏差値の高い上位3つの大学が選ばれています。
旧帝大B(旧帝国大学医学部)
名古屋大学、九州大学、東北大学、北海道大学
旧帝大Bは、旧帝大には含まれるものの、旧帝大Aには及ばない大学群が含まれています。
Aに及ばないとはいえ、全国的に非常に知名度があり、規模の大きな大学となっています。
旧六/七医大(旧制医科大学)
千葉大学、新潟大学、金沢大学、岡山大学、長崎大学、熊本大学
旧六/七医大(旧制医科大学)は、旧六医大に、京都府立医科大学を加えた7つの医学部を指します。
旧六医大とは、大学令によって大学に昇格した医科大学のことを指しており、旧帝大学には及びませんが、旧帝国大学の次に歴史のある大学群となっています。
こちらもやはり旧帝大に比べると知名度は落ちますが、名前を知っている人も比較的多い大学群となっていますね。
旧医専A
東京医科歯科大学
旧設(旧設公立医科大学)
神戸大学、横浜市立大学、名古屋市立大学、岐阜大学、三重大学、札幌医科大学、福島県立医科大学、山口大学、大阪市立大学、奈良県立医科大学、和歌山県立医科大学
旧医専B
鹿児島大学、徳島大学、信州大学、群馬大学、鳥取大学、弘前大学、広島大学
新設医大
秋田大学、広前大学、旭川医科大学、山形大学、筑波大学、愛媛大学、浜松医科大学、滋賀医科大学、宮崎大学、富山大学、島根大学、佐賀大学、大分大学、高知大学、福井大学、山梨大学、香川大学、琉球大学
私立大学医学部の序列・ヒエラルキー
国公立大学医学部の序列・ヒエラルキーを見てきました。次は、私立大学医学部の序列・ヒエラルキーについて見ていきましょう。
区分としては、以下のような5つの段階に分けられています。
- 御三家
- 私立旧設
- 新御三家
- 総合大
- 新設
私立旧制医科大学(私立御三家)
以下の私立御三家の大学は、国公立の旧帝大学と同様に戦前から存在する非常に歴史の長い医学部となっています。
慶應大学、東京慈恵会医科大学、日本医科大学
旧設私立医科大学(私立旧設)
旧設私立医科大学は、旧制の大学令に基づいて設置された医科大学を示します。
東京医科大学、大阪医科大学、久留米大学、岩手医科大学、関西医科大学、東京女子医科大学
旧設私立医科大学(新御三家)
順天堂大学、昭和大学、東邦大学
なお順天堂大学医学部は、上述の私立旧制医科大学(私立御三家)と並んで私立医学部四天王と称されたり、順天堂大学が私立御三家のどれかと入れ替わり、新御三家となるのではないかといった話もあります。
総合大
近畿大学、日本大学、帝京大学、東海大学
私立新設医科大学(新設)
自治医科大学、杏林大学、北里大学、川崎医科大学、聖マリアンナ医科大学、愛知医科大学、埼玉医科大学、金沢医科大学、藤田保健衛生大学、兵庫医科大学、福岡大学、獨協医科大学、産業医科大学、防衛医科大学校、国際医療福祉大学(2016年)、東北医科薬科大学(2017年)
受験・入試の際にヒエラルキーを考慮するべきなのか
さて、これまでで医学部の序列・ヒエラルキーがどのような点に影響するのか、また、実際のヒエラルキーは国公立・私立で具体的にどのようになっているのかを見てきました。
これらのことを考慮すると医学部受験の際に序列を考慮する必要はあまりないと結論づけられるでしょう。
前述の通り、開業を考えている場合は多少なりとも影響がありますが、そうでない場合は将来の就職・給与に出身大学の序列が大きく関わってくることはありません。
将来のことを意識しすぎてしまい、自分の実力に見合わない医学部を受験して浪人することになる方がよっぽど将来に関わってきます。
まとめ
以上、本記事では医学部の序列について大まかに解説してきました。
日本には数多くの医学部が存在し、医学部受験の志望校選びは非常に難しいことですが、本記事を参考に一人でも多くの医学部受験生が希望通りの志望校に合格できることを祈っています。
また、医学部受験には今回紹介した序列以外にも立地や国公立なのか私立なのか、学費や受験難易度など挙げればキリがないほどに考慮するべき点が多くあります。
自分がどのような分野について深く学びたいのかなど、広い視野を持って様々な医学部を検討してみてください。